「孫子の兵法」には「兵は詭道なり」という言葉があります。これは、「戦いはまっすぐ正直に進めるだけでなく、工夫や策略を使うことが大切だ」という意味です。
これを子育てや保育に当てはめると、子どもにただ「こうしなさい!」と指示するのではなく、うまく導く方法を考えることが大切になります。どうすれば子どもが自然に動くようになるか、楽しく学べるようになるかを工夫することで、無駄な衝突を減らすことができます。
- まっすぐ伝えるより、楽しく誘導する
子どもは「やりなさい」と言われると、反発したくなることがあります。でも、遊びのように楽しく誘導すると、自然と動いてくれることが多いです。
例えば、
片付け:「片付けなさい!」ではなく、「おもちゃをおうちに帰らせてあげよう!」と言う。
歯磨き:「歯を磨かないと虫歯になるよ!」ではなく、「バイキンマンをやっつけるぞ!」とゲーム感覚にする。
お昼寝:「寝なさい!」ではなく、「先生が子守唄を歌うから、どこまで聞こえるか試してみよう!」と遊びにする。
これはまさに「詭道(きどう)」の考え方で、子どもをだますのではなく、素直に動けるように道を作ってあげることがポイントです。
- 期待と違う行動をすると、子どもが興味を持つ
孫子の兵法では「相手の予想外の動きをすると優位に立てる」と考えられています。子どもとの関わりでも、いつもと違うやり方をすると、子どもは意外性に興味を持ち、スムーズに動くことがあります。
例えば、
片付けをしない子に「先生が先に片付けちゃおう!」と言って本当にやり始めると、「やっぱりやる!」と参加したくなることがある。
ご飯を食べたくない子に、「先生が先に食べるから、どっちが早いか競争しよう!」と誘うと、楽しんで食べ始めることがある。
子どもが「やりたくない」と感じることでも、やり方を変えるだけでスムーズに進むことがあります。
- 子どもの行動の意図を見抜き、先手を打つ
孫子は「敵が攻める前に、その動きを予測して対策を打つべし」と言っています。子どもたちの行動も、よく観察すれば先回りできることがあります。
例えば、
「そろそろ飽きて走り回るかも」と思ったら、その前に新しい遊びを提案する。
「おもちゃの取り合いが起こりそうだな」と感じたら、最初からルールを決めておく。
「お昼寝前にテンションが上がりすぎているな」と思ったら、少し落ち着く時間を作る。
先手を打つことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
- 環境を整えて問題を未然に防ぐ
孫子は「戦う前に勝つ」ことが大切だと言っています。これは、子どもとのトラブルを防ぐことにも当てはまります。
例えば、
おもちゃの取り合いを防ぐために、同じようなおもちゃを複数用意する。
靴を自分で履けるように、履きやすい靴を選ぶ。
友だちとぶつかりそうな場面では、あらかじめ別の遊びに誘導する。
このように、事前に環境を整えておくことで、子どもと衝突する機会を減らすことができます。
- 感情的なぶつかり合いを避ける
孫子は「怒りにまかせて戦うのは下策」と言っています。子どもと向き合うときも、感情的に怒るのは避けたいところです。
たとえば、子どもがいたずらをしたときに、すぐに怒るのではなく、
「どうしてそうしたのかな?」と気持ちを聞く。
「次はどうしたらよかったと思う?」と考えさせる。
「やってはいけない理由」をシンプルに伝える。
こうすることで、感情的な衝突を減らし、子ども自身が納得して行動できるようになります。
- 長期的な視点を持つ
孫子は「短期的な勝ち負けではなく、全体を見て勝つべき戦を選べ」と言っています。
子育てや保育も、目先の結果ではなく、長い目で子どもの成長を見守ることが大切です。
今日はうまくできなくても、明日は少し成長しているかもしれません。
失敗したときも、「どうすれば次はうまくいくかな?」と学びの機会にする。
すぐに結果を求めず、子どものペースを大切にする。
短期的な成功だけを求めるのではなく、子どもが自分で考え、成長することを意識すると、無駄な衝突が減ります。
まとめ
「孫子の兵法」は戦いのための知恵ですが、その本質は「無駄な争いを避けるための工夫」にあります。
子どもとの関わりも同じです。
指示をそのまま出すのではなく、楽しく誘導する
いつもと違う行動で、子どもの興味を引く
子どもの行動を先読みして、トラブルを防ぐ
環境を整えて衝突を防ぐ
感情的にぶつからない工夫をする
長期的な成長を意識する
これらを意識することで、「戦わずして勝つ」子育てや保育ができるようになります。
子どもとの関係をもっとスムーズにしたいときは、ぜひ孫子の考え方を取り入れてみてくださいね。
孫子の保育・子育てシリーズはこちら


コメント