「欲速則不達(そくをほっすればすなわちたっせず)」という言葉を知っていますか?
これは孫子の兵法に出てくる言葉で、「急いでも、かえって目的にはたどりつけない」という意味です。戦の場面だけでなく、子育てや保育にも深く通じる考え方です。
私たちは、つい子どもに「早くして!」と言ってしまうことがあります。「早く着替えて」「早く食べて」「早く片付けて」と、つい急かしてしまう。でも、子どもには子どものペースがあり、大人の都合で急がせても、うまくいかないことが多いですよね。
そんなときに大事なのが「待つ力」です。待つことで、子どもが自分の力で成長していく様子を見守ることができます。今回は、子どもの育ちにおいて「待つこと」がどんな意味を持つのかを考えていきましょう。
- 子どもの成長を焦らない
例えば、文字を覚えることを考えてみましょう。「早く字を書けるようになってほしい」と思うのは、親や先生として当然のことかもしれません。でも、無理に練習させたり、結果を急いだりすると、子どもが文字を書くことを嫌いになってしまうことがあります。
大人が「まだ書けないの?」「こうやって書くんだよ」と何度も言うよりも、子どもが「書いてみたい!」と思う気持ちを大事にするほうが、結果的にスムーズに習得できることが多いのです。
だからこそ、焦らず、その子のペースに合わせて「楽しい」「やりたい」と思える環境を作ることが大切です。
- しつけも段階的に
片付けや食事のマナーなど、生活習慣を身につける場面でも「待つ力」が求められます。
たとえば、子どもがなかなかおもちゃを片付けないとき、すぐに「早く片付けなさい!」と言ってしまうことはありませんか?
もちろん、時間がなくて急いでいるときは仕方ないこともあります。でも、毎回急かしていると、子どもは「言われないと動かない」ようになってしまうかもしれません。
そんなときは、
片付ける理由を伝える(「おもちゃを踏んだら危ないよ」など)
一緒にやる
「どっちから片付ける?」と選ばせる
といった工夫をすると、子どもが自然と行動しやすくなります。
大人がじっくり待つことで、子どもが「自分でやろう」と思える環境が生まれるのです。
- 大人も「待つ力」を持つ
子どもが何かに挑戦しているとき、大人がすぐに手を出してしまうと、子どもの「できた!」という達成感を奪ってしまうことがあります。
例えば、子どもが靴を履こうとしているとき。
大人が急いでいると、「もういいよ、やってあげる!」と手を貸したくなることもありますよね。でも、少し時間がかかっても、子どもが自分で履くのを待つことで、「自分でできた!」という喜びを味わうことができます。
こうした小さな成功体験の積み重ねが、子どもの自信につながります。
また、子どもが考えながら行動しているときも同じです。
例えば、お友だちとケンカしたとき。すぐに大人が間に入って解決するのではなく、少し様子を見守ることで、子ども自身がどうしたらいいかを考える機会になります。
待つことは、「何もしない」ことではありません。子どもが成長するための時間を与え、見守ることなのです。
- 「待つこと」は「信じること」
「待つ」というのは、単に時間をかけることではなく、「信じること」でもあります。
子どもを信じて見守ることで、子どもは自分の力で考え、行動できるようになります。
もちろん、全部を放っておくのではなく、必要なときには声をかけたり、サポートしたりすることも大切です。でも、「全部大人がやってあげる」のではなく、「子どもが自分でできるように待つ」ことが、長い目で見れば一番の成長につながるのです。
まとめ
孫子の言葉「欲速則不達」は、子どもを育てる上でもとても大切な考え方です。
子どもの成長を焦らない
しつけも段階的に
大人も「待つ力」を持つ
待つことは、子どもを信じること
この4つを意識することで、子どもの成長をゆっくりと見守ることができます。
「早くできるようになってほしい」と思う気持ちは、親や先生なら誰もが持つものです。でも、子どもにとって大切なのは、「早くできること」よりも「自分でできること」。
私たち大人が「待つ力」を持つことで、子どもたちは自分のペースで、しっかりと成長していくのです。
焦らず、ゆっくり。子どもたちの成長を信じて、一緒に歩んでいきましょう。
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