子育てや保育の現場では、「こうすべき」「この方法が正しい」という考えにとらわれてしまうことがあります。しかし、子どもたちは一人ひとり違うし、同じ子どもでも日によって様子が変わることもありますよね。
そんなときに思い出したいのが、孫子の言葉にある「水は方円の器に随う」という考え方です。これは「水は四角い器に入れば四角くなり、丸い器に入れば丸くなる」という意味で、状況に合わせて柔軟に対応することが大切だと教えてくれます。今回は、この考え方を子育てや保育にどう活かせるかを考えてみましょう。
- 子どもの個性に合わせる
子どもはそれぞれ性格が違います。活発な子もいれば、おっとりした子もいます。同じ注意をしてもすぐに理解する子もいれば、じっくり考えてから納得する子もいます。
例えば、何かルールを守ってほしいとき、
理由を説明すれば納得する子
体験を通して学ぶ方が理解しやすい子
何度も繰り返し伝えないと身につかない子
がいますよね。「この方法が正解」と決めつけるのではなく、その子に合った伝え方を工夫することが大切です。
また、叱り方や声かけの仕方も、子どもの性格によって変えた方がよい場合があります。大きな声で注意すると萎縮してしまう子もいれば、それでしっかり気持ちを切り替えられる子もいます。相手に合わせて関わり方を変えることで、よりよいコミュニケーションが生まれます。
- 環境や状況に応じて対応を変える
子どもは日々成長していきます。昨日できなかったことが今日はできるようになったり、反対に、いつもできていたことが急に難しくなったりすることもあります。
たとえば、
朝は元気いっぱいでも、午後になると疲れて集中できなくなる。
いつもは楽しんでやっていることも、その日の気分によっては乗り気にならない。
友だちと仲よく遊んでいたのに、ちょっとしたことでトラブルになる。
こうした変化に気づかずに、いつも同じ接し方をしてしまうと、うまくいかないことがあります。「今日はどんな様子かな?」と意識して、その時の状態に合わせた対応をすることで、子どもも安心して過ごせるようになります。
- 保育の現場で柔軟に対応する
保育園やこども園では、一日の流れが決まっていることが多いですよね。ですが、子どもたちの様子によって、活動の内容や進め方を少し変えてみるのも一つの方法です。
たとえば、
今日は外遊びが多めの日だけど、子どもたちが疲れているなら、室内遊びに変更する。
お話をじっくり聞ける日には、読み聞かせを長めにする。
落ち着きがない日には、まず体を動かしてから活動に入る。
「計画通りに進めなければならない」と思うと、先生自身もストレスを感じることがあります。でも、水のように柔軟に対応することで、子どもたちにとっても過ごしやすい環境を作ることができます。
また、子ども同士のトラブルが起きたときも、毎回同じ方法で解決しようとすると、うまくいかないことがあります。
すぐに謝れる子もいれば、気持ちが落ち着くまで時間が必要な子もいる。
言葉で説明できる子もいれば、うまく言えない子もいる。
「この子にはどう接するのがいいかな?」と考えながら、対応の仕方を変えてみると、よりスムーズに解決できることが多いです。
- 親も先生も「水のように」
子どもに柔軟に対応するには、大人自身も「こうでなければならない」という考えを少しゆるめることが大切です。
たとえば、
「毎日決まった時間に寝かせなきゃ」と思っていても、たまには特別な夜があってもいい。
「ごはんは残さず食べさせるべき」と考えていても、体調が悪い日や食欲がない日は無理をさせなくてもいい。
「すぐに片付けさせるべき」と思っていても、遊びに集中しているときは少し待ってあげてもいい。
大切なのは、「この状況ではどんな対応がベストかな?」と考えること。すべてを完璧にやろうとすると疲れてしまいますが、少し気持ちをゆるめるだけで、子どもとの関わりが楽になることもあります。
まとめ
孫子の「水は方円の器に随う」という考え方は、子育てや保育にもぴったりです。子どもたちは一人ひとり違うし、日によって様子も変わります。だからこそ、大人が柔軟に対応することが大切です。
「この子にはどんな関わり方がいいかな?」と考えながら、その時々に合わせた接し方をすることで、子どもたちも安心して成長していきます。
そして、大人自身も「こうしなきゃ」と思いすぎず、水のようにしなやかに子どもと向き合っていくことが、親や先生にとっても心地よい関わり方につながるはずです。
ぜひ、日々の子育てや保育の中で「水のように」柔軟に対応することを意識してみてくださいね。
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