1.はじめに
保育の現場では、毎日いろんなことが起こります。
子どもたちの元気な姿にほっとする反面、「ヒヤッ」とする場面に出会うこともありますよね。
たとえば、すべり台の上でふざけている子、誤って小さなおもちゃを口に入れそうになる子。
大きな事故にはならなかったけれど、「もう少しで危なかった…」と感じた経験、きっと誰にでもあるはずです。
そうした一歩手前の出来事を「ヒヤリハット」と呼びます。
今回は、この“ちょっとしたヒヤリ”をどう扱えばいいのか、記録や共有の仕方、そして防止のための工夫について、一緒に考えてみましょう。
2.ヒヤリハットとは?
「ヒヤリハット」は、文字通り「ヒヤッ」としたり「ハッ」としたりする瞬間を指します。
実際には事故やケガにはならなかったけれど、あと一歩でそうなっていたかもしれない…そんな場面です。
たとえば、
散歩中に子どもが列から離れそうになった
お昼寝中にうつぶせ寝になっていた
トイレの床で滑りかけた
など、日々の中に潜んでいる“かすかな危険”がヒヤリハットです。
このヒヤリハットは、事故を防ぐための大切なサイン。
実際、重大な事故の背後には、その前段階として多くのヒヤリハットがあるとされています。
「1件の重大事故の前には、29件の軽い事故と、300件のヒヤリハットがある」という“ハインリッヒの法則”も有名です。
3.なぜヒヤリハットの記録が大切なの?
「事故になってないし、大丈夫かな…」と思って流してしまいそうなヒヤリハット。
でも、こうした小さな出来事を記録しておくことには、大きな意味があります。
同じようなことが繰り返されるのを防ぐため
ほかの職員にも気をつけてほしい場面を共有するため
園全体の安全意識を高めるため
ヒヤリハットの記録は、“起きてしまったことを責める”ためではなく、“これからをよくする”ための大切な手段です。
一人ひとりの気づきが集まれば、園全体の安全度もぐっと高まります。
4.ヒヤリハットの記録方法
では、実際にヒヤリハットが起きたとき、どのように記録すればいいのでしょうか?
ポイントは、5W1H+「どうすれば防げたか?」
いつ(When)
どこで(Where)
誰が(Who)
何をしていたか(What)
どのように(How)
なぜそうなったか(Why)
たとえば、
「4月12日、園庭で3歳児のAちゃんが、すべり台を後ろ向きにすべろうとしていた。保育者がすぐに声をかけて止めたが、もし止めなければ転倒していた可能性がある。今後は遊具の使い方をあらためて子どもたちに伝えるとともに、見守りの位置を工夫する。」
このように、状況と気づき、そして今後の対応までセットで記録しておくと、見返したときにとても役立ちます。
紙の記録でも、タブレットなどのデジタル記録でもOK。
大切なのは、「気づいたらすぐ書く」ことです。
5.職員間での共有の工夫
ヒヤリハットを記録したら、それを職員みんなで共有することがとても大事です。
自分が見たことは、他の人にとっても参考になる“気づき”だからです。
朝礼や終礼でのミニ共有タイム
ヒヤリハットノートやホワイトボードへの掲示
週1回のヒヤリハットミーティングでまとめて確認
共有するときに意識したいのは、「誰かを責める」のではなく、「みんなで一緒に防ごう」という空気をつくること。
「私も気をつけなきゃ」「こういうこと、他の子にも起きるかも」と思えるような雰囲気ができると、自然と職員同士の声かけも増えていきます。
6.ヒヤリハットを未然に防ぐための対策とは?
ヒヤリハットをただ記録して終わりにするのではなく、次にどうつなげるかが大事です。
過去のヒヤリハットを定期的に振り返る
「この時期・この年齢で起こりやすいこと」を予測する
子どもたちに事前に伝えておく(例:遊具の使い方の確認)
保育者の立ち位置や見守りの仕方を工夫する
ちょっとした配置の工夫や一言の声かけで、ヒヤリを防げることはたくさんあります。
また、「あの子だから注意する」ではなく、「誰にでも起きるかもしれない」と思っておくことで、予防の視野がぐっと広がります。
7.おわりに
ヒヤリハットは、保育の現場において避けられないことでもあります。
でも、それを前向きにとらえ、共有し、工夫につなげることで、子どもたちの安全はぐんと守られていきます。
「大きな事故にならなくてよかった」で終わらせず、「今できることは何か」を考えること。
その積み重ねが、安心できる園づくりにつながっていきます。
これからも、ちょっとした“ヒヤリ”を、みんなで“安心”に変えていきましょう。



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