はじめに
「五輪書」は、宮本武蔵が著した剣術に関する名著で、単なる戦術の指南書にとどまらず、人間としての生き方や、柔軟な対応力、心の強さを身につけるための教えが詰まっています。
その教えは、子どもと接する保育の現場にも大いに活かせるものです。
保育の現場では、毎日予測できない事態が多く、子どもたちの気分や体調、成長段階によって求められる対応が変化します。
その中で、柔軟に適応し、基盤をしっかり築いていくための指針として、五輪書の教えは大きなヒントを与えてくれます。
今回は、五輪書の「五つの巻」―地、水、火、風、空―を保育の現場にどう活かせるかを、全体像としてざっくりとご紹介します。これを元に、次回からさらに詳細に掘り下げていきますので、ぜひ読み進めてください。
五輪書の「五つの巻」と保育へのヒント
地の巻:「心の土台」を育てる
「地の巻」は、基盤や土台を大切にする教えです。
宮本武蔵は、何事も基盤がしっかりしていないと、上に積み重ねていくことができないと説いています。この考え方は、保育の現場においても非常に重要です。
子どもたちの基盤を育てることが、保育の最も基本的な部分になります。
例えば、朝の挨拶や生活のリズム、基本的な社会性を育むことが「地の巻」に相当します。
この段階で子どもたちに安心感を与え、しっかりとした心の基盤を築くことが、今後の成長に大きく影響します。
具体的には、例えば「朝の挨拶をしっかりとする」「食事の時間をきちんと設けて、子どもたちに食べることの大切さを伝える」といった活動がこの「地の巻」に対応する部分です。
ここで大切なのは、「習慣としての土台」を作ることです。
水の巻:「子どもに合わせる」柔軟さ
「水の巻」は、水が流れるように、柔軟で柔らかい対応を求めています。
武蔵は、戦いの場においても柔軟な対応が必要であると説いており、保育の現場でもこの考え方が重要です。
子どもたちは一人ひとり異なり、その日の気分や体調、学びの進度に応じて反応が変わります。
このとき、その時々の子どもに合わせた柔軟な対応が求められます。
例えば、ある子どもが急に泣き出した場合、無理にその子を元気づけるのではなく、「今日は元気がないんだな」と感じて寄り添うことが大切です。
また、今日は元気に遊んでいた子が急に疲れてしまった時、無理に遊ばせるのではなく、「休みたいんだな」と理解し、静かな時間を提供することが「水の巻」の考え方に通じます。
火の巻:「今、この瞬間」をつかむ
「火の巻」は、戦いにおける勢いとタイミングを大切にする巻です。
武蔵は、決断力と即断即決の重要性を強調しています。保育の現場でも、子どもたちが何かに興味を持った瞬間にその熱意を引き出すタイミングをつかむことが重要です。
例えば、子どもが何かに夢中になっている瞬間に、その興味を深められるような活動を提案することが「火の巻」の精神です。
また、ある活動に取り組んでいる最中、子どもたちのエネルギーがピークに達した瞬間に次の活動にスムーズに移るなど、タイミングを見計らった対応が求められます。
風の巻:「いろんな風を感じる」
「風の巻」は、他の流派や視点を取り入れることを教えています。
武蔵は、何か一つに固執することなく、柔軟に他の考え方を取り入れていくことの大切さを説いています。
保育の現場でも、他園の取り組みや異年齢保育、さまざまな教育法を学ぶことが役立ちます。
例えば、他の園で行われているユニークな活動や、異年齢の子どもたちが一緒に遊ぶ経験から学べることが多いです。
「風の巻」の考え方を活かすことで、自分の保育がより豊かで多様なものになります。
空の巻:「とらわれを手放す」
「空の巻」は、最終的に固定観念にとらわれず、柔軟な心を持つことの重要性を説いています。
武蔵は、「無」や「空」の境地に至ることを目指し、固定観念や執着から解放されることが成長の鍵だとしています。
保育の現場でも、子どもたちの成長や状況に応じて、固定観念にとらわれず柔軟に対応することが求められます。
例えば、「これが正解だ」という考えに固執せず、子どもたちの個性に合わせてアプローチを変えることが大切です。
その時々の「子どもたちの気持ち」を大切にすることで、より良い保育ができるでしょう。
おわりに
五輪書の教えは、保育にも大きなヒントを与えてくれることが分かります。
「基盤をしっかり築く」「柔軟に対応する」「今この瞬間を大切にする」など、保育の基本的な考え方と深く通じています。
次回は、五つの巻の中でも特に「地の巻」に焦点を当て、具体的な実践方法やシーンに即したアイデアを深掘りしていきます。
これからの保育に役立つヒントが満載ですので、お楽しみに!



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